こんにちは。NottingHillです。
イタリアのラグジュアリーブランド「グッチ(GUCCI)」が世界各国で激しい批判にさらされています。
ターバン風のアイテムでグッチに批判
その理由は、インドのシーク教徒が頭に着用するターバン風のスカーフをネットなどで販売していた、というものです。

どうしてそれが炎上の理由になるの?と思われる方もいらっしゃるでしょう。
シーク教徒の団体は、「ターバンは神聖な宗教的アイテムであり、ファッション用に楽しむものではない」とする抗議声明を発表しています。
つまり、純粋な信仰に基づくターバンを、商業主義のために利用し、宗教的文化を盗用したというものですね。
シーク教は厳格な戒律を持つことで知られ、ターバン着用は宗教的な「義務」です。
多くの国ではシーク教徒への配慮も見られており、たとえば英国ではシーク教徒がバイクに乗る際、ヘルメットの着用をしなくてもよいとか。
そんな中での、今回のグッチの炎上スキャンダルです。
グッチは当該の商品の販売を中止し、商品名も変更する措置を取りました。
過去にも人種差別と批判されたグッチ
グッチが今回のようなことで炎上したのは初めてではありません。
2019年初めには、販売していたニット製品が、黒人差別だとして物議を醸し、謝罪に追い込まれる事態となりました。

顔の下半分はブラックで、唇の部分だけが赤くなっており、黒人を想起させ、差別意識が潜んでいるという批判です。
今回のターバン騒動も、人種か宗教かという部分は異なっていますが、全ての人が等しくファッションを楽しむという「ダイバーシティ」の原則からは逸脱しているのは明白です。
このように、いったんSNSなどで炎上が始まってしまった場合、「そんな意図はなかった」と説明したところで、後の祭りです。
グッチのようなグローバルな経験が豊富なブランドでもこのような事態になるのですから、さまざまな国で事業を展開するどんな会社も直面しうるリスクと言ってよいかもしれません。
文化や人種、性別といった面では、人々の意識は日に日に繊細になっています。
そういった点に少しでも鈍感になれば、長い年月をかけて築き上げたブランドイメージも一夜にして崩壊しかねません。
ドルチェ&ガッバーナの中国差別スキャンダル
思い出されるのは、これもイタリアンラグジュアリーブランド、ドルチェ&ガッバーナ(Dolce&Gabbana)の中国差別スキャンダルです。
これは2018年、ドルチェ&ガッバーナが中国でのファッションショーの宣伝動画を制作した際、中国人を差別するような演出をしたとして炎上したものです。
箸でピザを突き刺して食べるようなシーンが含まれていたため、「中国人やアジア人をばかにしている」という批判が巻き起こりました。

ネット上での抗議に対して、ブランドの共同創設者であるステファノ・ガッバーナ氏とみられる人物が反論し、さらに中国文化をあしざまに罵ったため、炎上はさらに拡大し、予定されていたファッションショーに出演するはずのモデルらが次々とボイコットする事態となりました。
ファッションショーは中止を余儀なくされただけでなく、中国ではボイコットの呼びかけが拡大し、通販サイトからは軒並みドルチェ&ガッバーナの商品が消えることとなりました。
騒動からある程度時間がたちましたが、ドルチェ&ガッバーナはいまだこの影響から完全には立ち直れていません。
売上の約3割を占めていたという中国市場を失ったダメージは計り知れません。
この騒動の後、ドルチェ&ガッバーナは絶対に身につけないというモデルやインフルエンサーも多いです。
ますます「ダイバーシティ」を意識する時代に
信頼を築くのは長い時間がかかりますが、失うのは一瞬です。
グッチやドルチェ&ガッバーナの騒動は、巨額のマーケティング費用をかけているグローバル企業であっても、SNSの炎上の影響からは逃れられないと示した一例にすぎません。
全ての人のためのファッションである「ダイバーシティ」の考え方は、ファッション分野にも急速に浸透しています。
どんなに「前衛的」だとデザイナーが思ったとしても、それが誰かの感情を害するのであれば、製品としては適切ではないということですね。
他民族、多文化が前提となっている欧米と異なり、日本ではこのような文化的差異による炎上のニュースは大きく取り上げられにくいと思います。
ただ、グローバルなブランドを身につけるのであれば、ブランド名だけではなく、そのブランドの価値観、考え方といったものをより理解した上での方が、アイテムとのより深い結びつきを感じられるのではないでしょうか。